さあ、それでは実際に記憶ってどのように脳の中で処理されるのか見てゆきましょう。
まず、目、鼻、口、耳、皮膚から入ってきた見る、聞く、触るなどの情報は統合されて大脳皮質の側頭葉で「ものごと」として認識されます。
その情報は海馬の中の歯状回という神経細胞に入り続いてCA3野、CA1野へと伝達され海馬支脚を通って再び側頭葉に戻ってきます。最終的に削除、再編集されて戻ってきた情報だけが記憶としてストックされるのです。
海馬の入り口である歯状回は進化論的には下等な動物ほど発達しています。つまり情報を入れやすいのです。高等動物ほど高次元な情報処理をするCA1野が発達しています。
残念なことに記憶の入り口である歯状回はねずみよりも脳全体として占める割合が小さいというなんとも切ない感じがします。
しかし、この歯状回の中の顆粒細胞が脳の中で唯一鍛えられて数が増えると言う増殖能力を持った神経細胞なのです。
入り口が増えれば記憶する能力は飛躍的に伸びて行きます。
この歯状回の神経細胞を効率よく増やすことができるのが記憶術なのです。
また、この歯状回の顆粒細胞は増えるだけではなく、反対に死んでゆくスピードも速いのです。脳内の他の神経細胞が入れ替わらないのに反してこの顆粒細胞は子供でも老人でも変わらず3〜4ヶ月で全て入れ替わってしまいます。
つまり、記憶力は使わないと退化し脳萎縮といわれるアルツハイマー型認知症を発症するリスクが高まるのです。
反対に鍛えれば鍛えるほどその記憶容量を増えて、その進化は100歳になっても衰えることはないのです。
海馬はエピソード記憶と意味記憶にかかわっているのです
例えば「1929年にハンス・ベルガーが脳波を発見した」という情報を覚えようする場合。この記憶は大脳新皮質の側頭葉から海馬と呼ばれる記憶の司令塔に運ばれます。そこで